今回は土地の所有権移転登記のお話です。
通常、土地の登記簿には甲区(所有権に関する事項)の欄に登記がされた日、受付番号、登記名義人が記載されています。
ところがこの土地には受付番号が記載されていませんでした。権利証を確認する際、謄本に記載の受付日・受付番号をもとに権利証を照合するのですが、それができません。
この場合、どのように権利証を確定し、登記申請するのでしょうか。
現在の登記情報の内容
インターネットから取得できる登記情報からは以下の内容を確認することができました。
①昭和36年に他の土地を合筆、分筆している。
②昭和50年に土地区画整理法による換地処分がされている。
③所有者の欄には「昭和39年法律第18号附則第4項により昭和48年〇月〇日登記」と記載されている。
④甲区の最後に「昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記」と記載されている。
まずは過去の謄本に受付番号がないかを確認するため、コンピュータ化以前の閉鎖謄本を取得してみました。
コンピュータ化される前の謄本はコンピュータ化後の登記情報と内容が変わらなかったので、さらにそれ以前の謄本、土地台帳を取得し、調べました。
コンピュータ化以前の登記簿は法務局に行って取得します。
すると取得した閉鎖謄本から現在の所有者へ所有権移転があったこと、その時の受付番号を確認することができました。
現在の登記名義人に売買されていることは間違いないようです。
昭和39年法律第18号附則第4項とは
さて、気になるのがこちらです。
参考
不動産登記法 附則 (昭和39年3月30日法律第18号)
(施行期日)
1 この法律は、昭和39年4月1日から施行する。
(経過措置等)
2 この法律の施行前に不動産登記法第44条の規定による書面を提出してされた登記の申請で、所有権に関する登記の申請以外のものについては、なお従前の例による。
3 この法律の施行前に合筆又は合併の登記のされた不動産に関し、この法律の施行後に所有権の登記名義人が登記義務者として権利に関する登記を申請する場合には、不動産登記法第35条第1項第3号の書面として、合併前のいずれか一個の不動産の所有権の登記の登記済証及び合筆又は合併の登記済証を提出することができる。
4 この法律の施行前に不動産の合併により移し、又は転写した所有権の登記でこの法律の施行の際現に効力の有するものがある不動産については、登記官は、法務省令で定めるところにより、この法律による改正後の不動産登記法(以下「新法」という。)第85条第2項(第97条及び第98条第2項において準用する場合を含む。)又は第87条第1項(第98条第1項において準用する場合を含む。)の規定に準じ所有権の登記をすることができる。
昭和39年より前の合筆登記は、登記記録の甲区欄に、それぞれの土地の所有権の記録が転写されていたそうです。
それが昭和39年法律第18号附則第4項の施行以降は、昭和39年法改正前に合筆や合併換地があった土地については、法務局の職権で新たに権利証を作ることができるようになったということだそうです。
法務局の職権登記がなされると受付年月日、受付番号は発行されません。
受付年月日及び受付番号の記載がない所有権登記がされていたのはこの規定のためだったのです。
なお、同3項によると合併前のいずれか一個の不動産の所有権の登記の登記済証及び合筆又は合併の登記済証を提出することができる、となっています。
今回の土地台帳にも合筆の記録があり、該当欄のところに「右合併により〇〇番△の土地の登記簿の登記用紙から移したので変更を登記する」と書いてあったので、同3項により、いずれか一つの不動産の所有権の権利証だけで申請ができるのかもしれません。
合筆前の全部の権利証がなくても登記申請可能なのか心配ではありましたが、今回売主様の権利証を確認したところ、合筆前の権利証が全部ありました。
というか合筆前の全部の土地がひとつの権利証になっていました。
土地台帳に記載されていた受付番号も確認できました。
合筆前の権利証が全部揃っていたのでこの権利証を添付し、無事所有権移転登記申請をすることができました。
昔の土地には所有権の受付番号のない土地がある
所有権の受付番号のない土地に出会うことは珍しいケースだとは思いますが、今後もあり得るかもしれません。
ところで、権利証はかなり歴史を感じる見た目で今にも破れそうでした。
このような権利証を見ることも今後は少なくなっていくのかもしれませんね。
なお、現在は合筆があると合併による所有権登記という登記がされて新たに識別情報が発行されます。
合併による所有権登記があった後に売買する場合、万が一、新たに発行された識別情報を紛失してしまっても、合筆前の権利証をすべて添付れば登記申請が可能です。
合筆後の権利証がなければ合筆前の土地の全部の権利証をつける、これが基本です。
また同じような場面に出会っても落ち着いて権利証を照合し、登記申請できるよう心掛けたいと思います。