外国人が不動産を購入するケースが増加していますが、登記に必要な住所証明情報について新しい通達がでました(令和5年12月15日付法務省民二第1596号)。
日本国内で不動産を購入し所有権移転登記を受けるためには、購入者(登記名義人となる方)の住所を証明する書類が必要となります。
日本に住民票がある方の場合は外国人でも市区町村役場で発行された住民票を提出すれば良いですが、外国に住所がある方は住民票がありません。
では外国に住所のある外国人、外国法人は住所を証明する書類として何を出せばよいの?ということについて新たにルールを設けたのが今回の通達です。
それでは中身を見ていきましょう。
外国に住所がある外国人が国内の不動産を取得するとき
外国に住所がある外国人が不動産の所有権の登記名義人となるときには、住所証明情報として以下の書類が必要となります。
本国又は居住国の政府が作成した住所証明書
提出書類:登記名義人となる方の本国又は居住国の政府の作成した住所を証明する書面。
・本国又は居住国とは、本国又は居住国の州その他の地域を含みます。
・政府とは本国又は居住国の領事を含みますが、公証人は除きます。
・上記の住所を証明する書面と同視できるものを含みます。
公証人が作成した住所証明書を提出する場合は追加書類が必要
公証人が作成した住所証明書も提出が可能です。その場合以下の①、②のどちらかの書類が提出書類となります。
①旅券(パスポート)がある場合
提出書類
・登記名義人となる方の本国又は居住国の公証人が作成した住所を証する書面。
・旅券(パスポート)の写し
ただし、旅券(パスポート)は以下の条件を満たしていることが必要です。
・公証人が住所証明書を作成した日又は登記申請の受付の日において有効な旅券の写しであること。
・旅券の写しの中に登記名義人となる方の氏名、有効期間の記載及び写真の表示のあるページが含まれていること。
・住所証明書と一体になっていない旅券の写しの場合は、原本と相違がない旨の記載と、登記名義人となる方の署名又は記名押印があること。
②旅券を持っていない場合
提出書類:
・登記名義人となる方の本国又は居住国の公証人が作成した住所を証する書面。
・旅券を所持していない旨の上申書
・登記名義人となる方の氏名が記載されている、本国又は居住国の政府が作成した書面又は電磁的記録の写し
3つ目の、本国又は居住国の政府が作成した書面又は電磁的記録の写しは、公証人が住所証明書を作成した日又は登記申請の受付の日において有効な書面の写しであることが必要です。
なお、電磁的記録の写しとは例えばPDFで作成されたデータなどのことを言い、この場合はPDFデータをプリントアウトしたものが該当します。
公証人による住所証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合
法制度上の理由などのやむを得ない事情があり、登記名義人となる方の本国又は居住国で公証人が作成する住所証明書を取得できない場合は、以下の書類を住所証明書とすることができます。
・日本の公証人が作成する住所証明書
・旅券(パスポート)の写し
・本国又は居住国の公証人が作成する住所証明書を取得することができない旨の上申書
旅券(パスポート)の写しは以下の条件を満たす必要があります。
・公証人が住所証明書を作成した日又は登記申請の受付の日において有効な旅券の写しであること。
・旅券の写しの中に登記名義人となる方の氏名、有効期間の記載及び写真の表示のあるページが含まれていること。
・住所証明書と一体になっていない旅券の写しの場合は、原本と相違がない旨の記載と、登記名義人となる方の署名又は記名押印があること。
外国に住所がある法人が国内の不動産を取得するとき
外国に住所がある法人が国内の不動産の所有権登記名義人になる場合は、住所証明書として次のいずれかの書類が必要となります。
設立準拠法国の政府が作成した住所証明書
提出書類:
登記名義人となる法人の設立に当たって準拠した法令を制定した国の政府が作成した住所を証明する書面
・国とは、州その他の地域を含みます。
・政府とは、設立準拠法国の領事を含みますが、公証人は除きます。
・上記の住所を証明する書面と同視できるものを含みます。
公証人が作成した住所証明書を提出する場合は追加書類が必要
提出書類:
ア 登記名義人となる法人の設立準拠法国の公証人が作成した住所証明書
イ 登記名義人となる法人の名称の記載がある設立準拠法国政府の作成した書面又は電磁的記録の写し。
イは、公証人が作成した住所証明書の日付及び登記申請の受付の日において有効な写しであることが必要です。
また、公証人の住所証明書と一体となっていない場合は、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる法人の代表者の署名又は記名押印が必要です。
公証人による住所証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合
法制度上の理由などのやむを得ない事情があり、登記名義人となる方の設立準拠法国で公証人が作成する住所証明書を取得できない場合は、以下の書類を住所証明書とすることができます。
・登記名義人となる法人の代表者の本国又は居住国の政府が作成した住所証明書
もしくは
・日本の公証人が作成した住所証明書
さらに以下のどちらかが必要となります。
ア 登記名義人となる法人の設立準拠法国政府の作成した書面等の写し
イ 登記名義人となる法人の代表者等が作成した、設立準拠法国の公証人の住所証明書を取得することができない旨の上申書。
なお、アについては次の条件があります。
公証人が作成した住所証明書の日付及び登記申請の受付の日において有効な写しであることが必要です。
公証人の住所証明書と一体となっていない場合は、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる法人の代表者の署名又は記名押印が必要です。
現地の言語で住所証明書が作成されている場合
住所証明書が登記名義人となる方の本国または居住国の言語で作成された場合には訳文の添付が必要となります。
まとめ
外国に住所がある外国人の住所証明書は一般的に宣誓供述書が用いられます。宣誓供述書とは住所、氏名、生年月日などの情報が書かれたものを公証人が認証をした書類です。
そのため、外国人に住所がある外国人が日本の不動産の所有権移転を受ける場合にはパスポートのコピーも必要になるケースが多くなることを覚えておきましょう。