(本記事は令和4年度に執筆した内容を掲載しております)
こんにちは。
相続登記についてのお話です。先日、建物の保存登記の依頼を受けました。保存登記をしないまま所有者が亡くなってしまったのだそう。この場合は相続人から保存登記の申請をすることができます。
お話を伺い、早速インターネットで登記情報を確認してみました。すると表題部のみ登記されていたのですが、所有者の欄に被相続人の氏名しか記載されていません。本来は氏名と住所が記載されているところ、住所が記載されていないのです。
これでは亡くなった本人がその建物の所有者であることの同一性を明らかにすることができません。
さて、どうしたらよいのでしょうか。
被相続人の住所を証明できる書類が一切なかった!
被相続人が亡くなったのは昭和36年。かなり前です。住民基本台帳法が施行されたのは昭和42年。役所には戸籍の除附票も、住民票の除票もありません。
固定資産税評価証明書の名義は納税者である被相続人の妻の名前になっています。
ところで今回は被相続人の妻の相続もありました。妻は建物が建っている土地の名義人になっていました。
最初に被相続人が亡くなり、つい最近妻が亡くなったというケースです。
妻の方は附票が取れたので調べてみると、市町村合併、地番変更がありました。ご夫婦はずっと同じ家に住んでいたと思われますが、被相続人の死亡時の住所は現在の住所と違っていたとようでした。
妻の附票から被相続人の最後の住所について想定はつくものの、それを証明できる書類は一切ない状況でした。
登記簿上の住所から現在の住所までが繋がらない場合を準用して書類を準備
今回は、保存登記に添付する書類として3年分の固定資産評価証明書と上申書を準備することになりました。
依頼人から役所に連絡してもらい、固定資産評価証明書の氏名を被相続人の氏名に戻してもらうことができました。
そして所有者が被相続人の氏名となっている固定資産評価証明書を過去3年分取得してもらいました。
上申書は、被相続人の所有する不動産で間違いないということを法務局に上申する書類です。相続人全員に書いてもらいます。
相続人も数次相続が発生しており、最終的な相続人は9人でした。
書類に被相続人の最後の住所をどう書くべきかという問題
用意する書類は決まったものの、被相続人の最後の住所、どう書けばよい?と頭を悩ませました。
遺産分割協議書、上申書、相続関係説明図には最後の住所を記入しますが、本当の最後の住所というのはわかりません。
固定資産税評価証明書に記載されている住所は、市町村合併後で地番変更前の住所でした。
被相続人が亡くなったのは市町村合併前なんだけどな、と思いながら住所を特定できる資料が評価証明しかなかったので評価証明書の記載通り、住所を記載しました。
遺産分割協議書は証明書形式に
今回、遺産分割協議で1人の相続人の方が相続することが決まったのですが、実は被相続人が亡くなった当時の相続人がすでに亡くなり数次相続が発生していました。
被相続人の亡くなった当時はまだ生まれていなかった孫が遺産分割協議に参加することはできないということでしたので、今回は被相続人が亡くなったあとにすぐ遺産分割協議をしていたという形にして当時の遺産分割協議を証明するという遺産分割協議証明書を作成しました。
孫含め相続人全員にサインをいただくのですが、孫について肩書をどうしようと、小さなことで悩んでしまいました。
だって、「被相続人Aの亡相続人B(年月日死亡)の相続人」などと書いたらなんだかややこしくなってしまいます。
最終的には「亡A相続証明者(相続人Bの相続人)」という形でまとまりました。うーん、これでもややこしいかもしれませんけどね。
いよいよ登記申請
不安はありましたが、準備が整い登記申請。遠方だったので、万が一、管轄の法務局まで出向くことになったら大変だなと思いました。
しかし問題なく登記完了。本当にほっとしました。
相続人の方は被相続人の妻の方の預貯金の手続きが残っているとのことだったので、銀行に提出が必要な書類をまとめてファイリングし、完了書類の納品をいたしました。
保存登記が完了して一安心
相続人の方によると、今回保存登記した建物は古い建物なので、将来的には取り壊すそうですが、しばらくはたまに訪問して故人を偲ぶそうです。
今回はもしかしたら疑義があったかもしれないけれど、被相続人の妻の相続登記も同時に申請したことで何か不足を補えたのかもしれません。
相続登記は義務化されることが決まっていますが、相続登記をせず長年放置していた不動産については、自分で登記申請するのが難しいケースもあります。
そんなときは専門家である司法書士にご相談ください。